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ザ・コンサルタント/放任会計士

 

I spent my whole life only recognizing my lucky breaks after they were gone.

※ネタバレあり

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ついにベン・アフレックが皆殺しおじさんの仲間入り。リーアム・ニーソンデンゼル・ワシントントム・クルーズキアヌ・リーブスらが続々と参入?を果たしている珍ジャンルに満を持しての登場。そして完璧。

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出演作の中でそれっぽい映画にも幾つか出ているけど、このタイミングというのは昨今の流れの中での出演……というわけでもないのかな。どうなんだろう。内容的にかなり『デアデビル』っぽさとかもあったけど、製作者たちは意識していたのだろうか。監督は『ウォーリアー』のギャヴィン・オコナーで、単なる皆殺し映画(柳下毅一郎氏的な意味でなく)で終わることなく、寧ろ温かい家族映画として観られなくもない的な側面というか、寧ろ皆殺し映画かと思っていくと、違ったテーマが見えてきて面白い、という体験ができる。できてどうなのかはよくわからないけど。

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イコライザー』の主人公:ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)がヤバいやつであることを見せつけるドアの開閉シーンは鮮烈だけど、本作は「舐めてたやつが実は〜」系でありつつも、寧ろ他の映画ではキャラクターのいち要素である主人公の特異(とされがちな)性質を主題として扱っていて、そこが他の皆殺しおじさん映画と違うところだろう。

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映画は現在と主人公:クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)の過去を交互に行き来する構成になっているが、そこで丹念に描かれるのは、彼の高機能自閉症と家族についてである。そして最後まで映画を観てわかるのは、これが高機能自閉症の主人公の感性に沿って描かれた物語であり(だから「やると決めたら最後までやる」のだ。モラル?公益?知ったことではない)、また常人には理解し難い彼ら家族の絆の物語であったということだ。変な話だけど、裏の世界の会計士をしているとか、全員ブッ殺す的な部分は本筋ではない。人を殺そうが殺すまいがこの世界は主人公にとってあまりにも生き難い世界であったし、数少ない理解者を奪った/奪おうとする輩は誰であろうと絶対に殺す、そういう心積もり。

面白いのは、ヒロインっぽいポジションでキャスティングされ、それっぽい関係になりそうでならないアナ・ケンドリック演じるデイナ・カミングスだ。彼女は、言うなれば『ミッション:8ミニッツ』におけるミシェル・モナハン(演じるヒロイン:クリスティーナ・ウォーレン)である。主人公ほどではないにしろ数学が得意であるデイナは、その他大勢の人々よりも主人公への理解度が高い。少なからず彼の才能に気がつき、自分に近しいものを感じる。逃亡先のホテルで彼女が語るプロムパーティのエピソードは、主人公と世界との間にある断絶が白か黒か、0か1かの絶壁のような寄る辺ない断絶ではなく、グラデーションのあるなだらかな山のような斜面であることを気が付かせてくれる/思い出させてくれるものであった。だからこそ、主人公は彼女のために危険を犯すわけだ。それでも/それだからこそ主人公は最後の一歩を踏み込むことなく、黙って去っていくのである。また会うこともあるかもしれない。

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そして、本作の真のヒロインは主人公を電話で導く謎の女性である。『ミッション:8ミニッツ』の真のヒロインがヴェラ・ファーミガ演じるコリーン・グッドウィン大尉だったように。彼女の正体が明かされる場面での一種の爽快さは素晴らしい。『自閉症の僕が跳びはねる理由』を著した東田直樹氏を思い出す。映像で観る彼の(高機能自閉症故)とってしまう挙動と文章の端正さのギャップは衝撃的であり、まさに電話の彼女のように心の中は透明で自由だった。

正直JKシモンズと彼の部下である女性捜査官は必要だったのかやや疑問だけれど、まぁ主人公の来歴を語らせる上では必要だったのかな。JKシモンズが予告編で絶叫していたのは、結局どの場面だったのだろう。簡単に入れるあの家は、要塞じゃなくて寧ろ狩場であり、蜘蛛の巣なんだろうな。次回作以降でそこのとこ描かれると嬉しい。

そういえば、本作には今や黒歴史な感じになっているベン・アフレックが主演していた『デアデビル』っぽいところもあった。父親との関係性、仕込まれた格闘技、そして別れ方。彼ら兄弟の生き方的には、寧ろ『キック・アス』のヒット・ガールのその後的と言ったほうがより正確かもしれない。

ガンガン襲撃された結果、自分を守る筈の暗殺者のリーダーと皆殺し会計士マンが殺し合うと思ったらイチャつき(殴り合い)だしたのを監視カメラで見せられてたあの社長はどんな気分だったのか想像するだけで笑える。寧ろホラーだよなぁ。

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ベン・アフレックの居心地の悪そうな感じとか、広すぎる肩幅とか、本作の主人公には本当にぴったりで、頑張って表情作ったり他者の感情を汲み取れたことを確認するところとか、リアリティ半端ない。これだけのはまり役はめったにないし、皆殺しおじさん系の映画としても切り口新しいから、是非シリーズ化して続けていってほしい。最高だった。

I like incongruity.