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ゴーストは囁かない

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I am Major and I give my consent.

想定通りの底知れぬ低クオリティ。クリステン・スチュワートとの浮気と『スノーホワイト』の監督くらいかキャリアがないことは差し引いても、監督のルパート・サンダースの無能っぷりというか、才能と誠意の無さは青天井で、原作のスピリットを継ぐことも、自分の解釈を加えて自由に広げることもできなかった結果、出来上がったのは歪で空っぽなマッシュアップ、107分のMAD動画でしかなかったという、ね。

押井版、神山版、ARISEの要素まで全て網羅しているといえば聞こえはいいが、要するに引き算が出来ない無能さを全編で晒しているだけで、しかもどの要素を取っても、理解も咀嚼も解釈も出来ていないというところが観ていて本当に辛い。画的な面白さがあればまだ救いはあったかもしれないけど、街並みは何周遅れかわからない『ブレード・ランナー』のパクり(しかも稀に見る酷い劣化コピー)だし、銃器周りやヘリ等の兵器描写にも微塵のフェティシズムもなく(トグサはマテバ持ってたけど)、何のために存在するのかわからない公安9課で無能共が右往左往する様を見せられても困惑するしかない。草薙素子がどの媒体でも同質のキャラクターでなければ納得できない、許せないなんて全く思わないけど、ここまで無能なキャラクターにするなら、本来の彼女の役割を他のキャラクターが担う等のことはしてもよかった筈。

何がどうして誰の差し金で起こったのかが終始判然としない要素が攻殻シリーズには確かにあって、電脳化と義体化が進んだ果てでは個人をアイデンティファイすることが限りなく難しくなっている、というようなことがその理由だったりするわけだけど、本作で何がどうして起こっているのかが終始わからないのはそういったシリーズ特有のガジェットや設定、思想に依るのではなく、単純に映画製作の技能が低いからに過ぎない。すっきり整理された三幕構成のシナリオだけが絶対の正義だなんて言う気はさらさらないし、そんなこと思ってもない(面白ければなんでもいい)けど、基礎が固まってないやつに応用なんてできるわけないので、素直にもっとシンプルな映画を作るべきだと思う。愛があって歪になっているなら許せるものの、単純に才能と誠意がない結果のこの体たらくは怒りと憎しみを呼ぶだけだ。

ビジュアルについても、何もかもが酷いので全てを挙げていちいち文句言う体力残ってないけど、街並みは勿論、ガジェット全て、少佐周りの設定全般、バトーの目、クゼ全般、ビートたけし(モゴモゴ喋ってて日本語なのに何言ってるかわからないのも含めて)、多脚戦車のデザインと、もう本当になんなんだと。退化したクラブ描写も、マヌケな棒立ちの銃撃戦も、その辺のアクション映画を遥かに下回るクオリティ。いや、これはアクション映画じゃないんだ、人間と機械の境目が曖昧になった世界でアイデンティティを模索する物語なんだと言っても、『マトリックス』がある限りそんな言い訳最早この世界では通用しないわけで。

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政治的な要素が排除されている(表層的で場当たり的なセリフとしては出てくる)のも気になったかな。冷戦構造が崩れた現在であっても、外交的駆け引きの結果押される「横車」とか、軍事独裁者の亡命なんかはあるし、それらがなくても企業犯罪だっていくらでも描き方があっただろうに……。阪華の社長がただの人間(しかも弱い)だったのにもがっかり。

こうやって考えると、自分が思っていた以上に攻殻機動隊好きなんだなと改めて思った。今TVシリーズとか観ると、めちゃくちゃ楽しめそうな気がする。